スズキ - 弁慶丸

西潟正人の魚道場

スズキ

2019.06.24

1㍍を超える大型魚なのに、沿岸や河口付近によく群れる。小魚を追うフイッシュイーターで、ルアー(疑似餌)釣り師はシーバスと呼ぶ。多くの魚が春に産卵期を迎えるのに、スズキは晩秋。その産卵期に控え、暑い夏に脂がのって旬とされる。旨い白身魚が求められる季節だけに、価格もちょいと跳ね上がる。魚がもつ、それぞれのパーツを味わうならスズキを勧めたい。皮や胃袋、白子や浮き袋の旨さは、ほかの魚にも応用できる。基本は、スズキから学ぼう。

下ごしらえ

① 旬は夏とはいえ、産卵期を控えた雌は卵巣に栄養を取られている。腹の大きなスズキは立派に見えるが、スマートな体型が味はいい。

② ウロコが飛ぶので、新聞紙を広げるなどの準備をした方がいいだろう。

③ エラぶたを開けて、内蔵を傷つけないように腹を開く。精巣(白子)を見つけたら、大当たり!

④ エラごと腹ワタを取り出したら、エラ元から頭部を落として水洗いする。内蔵物の宝物は、白子、浮き袋、胃袋で、卵巣の食べ方は後述する。大食漢のスズキは胃袋に食べたモノが詰まっていることが多い。胃袋は膨らむと薄くなるから、我々が食べるなら空っぽの、肉厚な胃袋が望ましい。

⑤ 胸ビレの際から大きく、肛門の位置までカマ部を切り取る。

⑥ 腹身は薄いので、刺し身には向かない。

三枚下ろし

⑦ 背ビレの際皮を切り進み

⑧ 尾ヒレのつけ根で、包丁を回す。

⑨ 腹側から、中骨に沿って開いていく。

⑩ 固い腹骨は包丁を立てて切り、背身を開くと片身が取れる。

⑪ 残った片身は尾ヒレ側から、背身の皮に包丁を入れる。

⑫ 腹側から開いて腹骨を切り

⑬ 背身を開くと、三枚下ろしの完了だ。

サク取り

⑭ 腹ワタを包んでいた、腹骨をすき切る。

⑮ 片身には、小骨(血合い骨)と皮が残っている。

⑯ 尻尾の方向から、皮を引く。まな板に包丁を押し当てるようにしながら、皮を切らないように引く。

⑰ 皮直下に、ウマ味の層があるからだ。

⑱ 片身の真ん中を走る小骨(血合い骨)を背身に残して、腹身を切り離す。

⑲ 小骨は、背身に残すと切り落としやすい。

⑳ 真ん中(血合い筋)で分けると、双方の尻尾が細くなってしまう。背身から小骨を外したら、尻尾は幅広に切り落とす。2枚の片身で、4本のサクが取れる。

㉑ 保存するなら吸水紙で包み、さらにラッピングして冷蔵庫へ。

宝物の扱い

㉒ 身を向こうに置いて左から、皮、浮き袋、白子。肉厚の胃袋なら開いて粗塩でもみ洗い、仲間に加える。

㉓ 皮は一瞬だけ湯引いて、冷水に取る。煮すぎると溶けた感じになるので、しっかり見つめていること。

㉔ 浮き袋は、1分ほど煮る。

㉕ 透明感が出たら、引き上げて冷水に取る。胃袋も1分ほど煮て、冷水に取る。

㉖ 白子は皮と同じように、表面だけに熱を通す。強火で、表面だけを焼くのも一考だ。

㉗ 副産物、なんて呼んだら申し訳ない。

刺し身

㉘ たっぷりとした厚みに切ると、穏やかな気持ちになるのはなぜだろう。

㉙ 皮と浮き袋、白子を添える。

㉚ 薄造りなら、大皿がいい。夏の宴が、一際華やぐ逸品だ。

㉛ 晩酌用なら浮き袋、皮、胃袋に卵巣の塩辛を添えたい。

㉜ 皮付きのサクを、ぶつ切りにしても面白い。

㉝ 表面だけを焼いて、針ショウガを添える。

㉞ 湯引きしたら、玉ネギにポン酢醤油だ。

あら煮

㉟ 頭部の、エラぶたを切り取る。

㊱ 頭部を2つ割りにする。骨が硬いので、注意すること。

㊲ 眼球を避けて、適宜に切り分ける。

㊳ 鍋底に昆布を敷き、あらと大根を一緒に煮る。

㊴ 醤油味で甘辛に煮詰めると、家族も喜ぶ。夜半、酒のサカナにしようとのぞき込むと、少しだけ残っている。よかった・・。

卵巣

㊵ 産卵期の、スズキの卵巣はデカイ。身がやせる、わけだと納得する。こぼさないように、腹を開けることだ。

㊶ 無事、卵巣を取り出すと背骨に張り付いている白い幕が見える。これが、浮き袋だ。

㊷ 流れ出た卵は、丼などに集めよう。

㊸ 塩と酒で塩辛にした残りは、大鍋で煮る。味つけをして、水分が飛ぶまでかき混ぜると、自家製の「そぼろ」になる。味を濃いめに煮詰めると、調味料にもなる便利な「ふりかけ」だ。