スルメイカ
2019.06.24
スルメイカは漁獲量で、日本を代表するイカと言っていいだろう。開いて干したスルメ、肝を使った塩辛など、古くから私たちの生活に染みこんでいる。ところが、それらの料理を家庭で作ることがなくなった。スルメイカを1匹まな板にのせて、さてどうする? 下ろし方さえ学べば、美味しい料理は無限に待っている。さぁ、挑戦だ。
下ろし方
① 写真の状態でまな板に置くと、左から ヒレ→胴部→頭部→脚 となる。10本の脚には2本の長い蝕腕が含まれる。
② 胴部と頭部を、左手と右手に持つ。
③ 胴部(外套膜)に指を入れて、頭部とつながっている腱を切る。
④ 内蔵を切らないように、ゆっくりと引き抜く。
⑤ 先端まで抜けたら成功だ。
⑥ 肝に付着している墨袋の頭部側(吐き出し口)を、しっかり押さえて剥がし取る。
⑦ 残った内蔵ごと、捨て去る。
⑧ 頭部と肝を切り離す。
⑨ 吸水紙の上で、肝にたっぷり塩をする。
⑩ ヒレを外す。
⑪ 背骨を引き抜く。
⑫ 胴部を開く。
⑬ 内部に残った内臓を洗い流して、水気を拭き取る。
精莢(せいきょう)に注意!
⑭ 雄は精子を精莢というカプセルに入れて、雌へ発射する。このカプセルの塊を見つけたら、注意が必要だ。
⑮ 箸でつつくと、精子がツンツン飛びだす。
⑯ 温かい粘膜に触れると、噛みついて離れない。口に入れようなら、口中に房状になってぶら下がる。無理に取ろうとすると、血だらけになる。要注意だ。
皮を剥ぐ
⑰表皮をヒレの方向から剥ぐ。
⑱内側の薄皮も、布巾でつかむと剥がしやすい。
アニサキスに注意!
⑲ ここで、要注意! スルメイカなど北回帰する魚類には、アニサキスという恐ろしい腺虫が宿ることがある。生食するときは、残さず駆除すること。胴部の内側に違和感がなく、染み一つないようなら安全だ。汚れのような白濁している箇所があったら、爪楊枝の先などでほじってみよう。
⑳ 身を崩してしまうとわかりづらくなるので、慎重に。
㉑ にょろりと出てきた、これがアニサキスだ。
㉒ 2㌢ほどの丸まった糸くずのようだが、胃壁に食い込むと激痛を起こす。2~3日は夜も眠れずに、病院行きだ。すっかり取り去って、安心したら次の段階に行く。
整形
㉓ ヒレ方向の尖った先端と、胴部の裾を切りそろえる。
㉔ 胴部は縦2枚に切る。
㉕ 2匹なら4枚の身が取れて、胴部の整形が完了だ。
㉖ 頭部は、漏斗側から包丁を入れて開く。
㉗ 目玉を、つぶさないように持ち上げる。
㉘ 目玉と口(烏鳶)を取り去る。
㉙ 脚部の長い2本の蝕腕だけ、固い爪(吸盤)を切り取る。
㉚ 脚の先端を切り揃える。
㉛ 脚部の整形が完了だ。
㉜ 刺し身にする本体身と、脚部やヒレを含めた付属部に分ける。
塩辛
㉝ 脚部など付属部を、適宜に小口切りにする。
㉞ 塩漬けしておいた肝を、水洗いせずに合える。付属部の塩辛には食感の違いが混ざり合うため、塩分を強めにしてほどよい熟成が必要だ。冷蔵庫に入れて日に一度はかき混ぜ、1週間したら食べごろだ。
㉟ 刺し身に切ったスルメイカで、極上の塩辛を作る。
㊱ 塩漬けした肝をしごくように絞り、手についた塩と一緒にかき混ぜる。
㊲ かき混ぜた直後も、ねっとりと絡みつくウマ味がたまらない。熟成させると、さらにねっとり感が増す。皿まで、なめたくなってしまう。
肝合え焼き
㊳ 脚やヒレ、端切れなどの付属部に、肝と長ネギと味噌を用意する。
㊴ よくたたいて、混ぜ合わす。
㊵ アルミホイルなどに、1㌢ほどの厚さに伸ばす。
㊶ 表面がやや焦げるくらいまで、オーブンで焼く。肝の脂が味噌に溶け、長ネギの青臭さが調和する逸品。
ルイベ
㊷ 胴部は、表皮を剥いだだけで開かない。
㊸ この筒状に、塩漬けした肝を挿入する。
㊹ 手でかるく押して空気を抜きながら、内部の肝の厚みを均等にする。
㊺ ラップで包んだら、冷凍だ(冷凍することで、アニサキスは死んでしまう)。
㊻ 凍っているうちに、細切りにする。
㊼ 肝が溶けると、だらしなくなる。半冷凍くらいを、口の中で溶かしながら食う。酒飲みには注文に応じて少しずつ出す。これが、コツ。
肝焼き
㊽ 刺し身に肝を焼いて添えると、また乙なもの。ワサビやショウガのつけダレとは違った、濃厚な味わいが楽しめる。
一干し
㊾ 漁師は捕れたスルメイカを船上で開き、潮風に当てながら帰港する。干し時間は、せいぜい1~2時間。一干しは「ひとっぽし」といい、この焼きイカに勝るものはない。町の魚屋モンでは、まずムリ。捕れたてが手には入ったら、自宅のベランダでやってみたらどうだろう。干す場所は、風通しのいい日陰が条件だ。