ワカメ(海藻)
2020.01.22
ワカメ(海藻)
海藻の中では、コンブと並ぶ重要なワカメだ。日本各地で養殖され、「鳴門ワカメ」「三陸ワカメ」「三浦ワカメ」などはブランド名になっている。水温が下がる晩秋のころに芽生え、初夏には一掃されたように消えてしまう。その保存方法には古くから幾多の工夫があり、食べ方も様々。大量のカルシウムとヨードを含む栄養食品は海辺だけでなく、山間奥深くの人々にこそ貴重だったに違いない。現代の食卓にも欠かせない海藻で、生き物としてのワカメを、知らずに食べていては申し訳ない。
養殖
①ワカメの根っこ、芽株(めかぶ)を春の終わりに取り置いて、細いヒモに培養させる。そのヒモを相模湾なら10月末頃に2㌢ほどに切り、撚ったロープに挟む。これが、種づけだ。
②このロープを、内湾の水深1㍍ほどで棚状に張る。通称「ワカメ棚」は、干潮時に水面に浮くように設計され、海藻の生育を促進させる。
③12月初頭には、一番ワカメが採れる。
④1月に入ると、最盛期だ。2月には天然ワカメが解禁になるため、養殖業者は大忙し。東京湾産のブランドは、「猿島ワカメ」。成長すると、4㍍を超える。採取したばかりは海水に打ち当てて洗い、市場へ出荷する。
茎ワカメ
⑤その茎が、胞子を放出する箇所から芽株と呼ばれる。
⑥生だと茶褐色で滑り気もないが、湯がくと真緑色になり、包丁で叩くとネバネバだ。
⑦醤油をかけ、好みで鰹節を振りかけて、さらに箸でかき回す。そのドロドロを、飯にかけて食う。通称「めかぶ丼」は、1杯じゃもの足りない。
葉ワカメ
⑧漁師にとっては、商品の主要部分である。生干しは海藻の香り高いが、翌年の梅雨時に再度干さないと日保ちがしない。湯通しして緑色にしてから干すと日保ちがよく、衛生的に見えるが香りは劣る。
⑨手間はかかるが、保存に適するのは「灰干しワカメ」だろう。灰のアルカリ成分が色を鮮やかに保ち、海藻香も損なわない。
⑩ともあれ、生ワカメにかなうものはない。採取されたばかりの茶褐色を丼に盛り、湯を沸かす。真緑色になった瞬間を、ポン酢につけて食う。春の、醍醐味だ。
塩蔵ワカメ
⑪近年は湯通しして、茎を取り除いた「塩蔵ワカメ」が市場を席巻している。水につけて塩出しするだけで、鮮やかな緑色が蘇る。加工する過程で残るのは、「茎ワカメ」で、市場に出回ることがある。
⑫季節柄、梅干しを作った後の梅酢に漬けてから太陽に干す。写真は三浦漁師の奥さんの手作りだが、懇願して少量をいただくほど絶品だった。
余談
養殖、と言うと人工的、薬漬けで育てているようなイメージがある。だが技術は進化して、人の手は水産資源の増殖に欠かせなくなっている。ワカメなどの海藻は、胞子を育てて環境に見合った海へ沈めるだけ。それらの胞子が飛び散って岩に付着すると、天然ワカメだともてはやされる。違いを論じるより、海を大切にしたい。