マルアジ(ムロアジ属) - 弁慶丸

西潟正人の魚道場

マルアジ(ムロアジ属)

2020.01.22

ムロアジの仲間

(マルアジ・クサヤモロ・オアカムロ)

 

ムロアジの仲間は、マアジと比較されて下魚扱いされている。違う種なのだから、比べられるのも迷惑な話に違いない。それでも彼らは文句を言わず、生を謳歌しているように見える。大きな違いは、身が水っぽいために日保ちがしない。鮮魚の流通が、現代ほど完備されていない時代の下魚扱いなら納得だ。ムロの語源は播州室津辺りが産地で、名を馳せたというが定かでない。干物ばかりではなく、鮮度のいいヤツを味わってみよう。代表的なマルアジ、クサヤモロ、オアカムロの紹介だが、料理はムロアジ属全般に応用できる。

 

マルアジ

①関東では青アジと呼ばれ、ムロアジの代表格。一網打尽にされた日の漁師町では、すこぶる安い。胴体を筒切りした形状が丸いから、マルアジだ。

②ウロコを掻き落とすと、細かな雪のように積もる。

③数十匹の小魚を下ろすときは、一斉にウロコ落とし→一斉に頭部落とし→一斉に腹開き→一斉に洗う。これが、コツ。

④三枚に下ろしたら、腹骨をすき切る。小骨(血合い骨)は、残っていてかまわない。

⑤数が多ければ新聞紙を広げて、全体に塩を振る。

⑥2時間ほど置いて塩が溶け出したら、水洗いして水気を拭き取る。

⑦器に昆布を敷いて、生酢に漬け込む。

⑧冷蔵庫に半日ほど(6~12時間)置いてから取り出す。

⑨皮は手で剥いで、片身を一切れで盛る。

⑩片身が大きければ、細かく包丁目を入れて小骨を切る。ムロアジの仲間は刺し身でも、ほおばるように食って醍醐味だ。

 

クサヤモロ

⑪ムロアジの仲間はよく似て、見分けが難しい。

⑫マアジ属との違いは尾ビレのつけ根、背と腹に一対小さなヒレ(小離鰭)があること。クサヤモロの特徴は、尾ビレの下葉前縁がほんのり赤い。こんな観察も、魚料理を楽しくさせてくれる。

⑬ウロコを落とす。

⑭胸ビレの際から、頭部を落とす。

⑮腹を開いて腹ワタを出し、水洗いする。

⑯水気を、しっかり拭き取る。

⑰背ビレ際に包丁を入れ、尾ビレまで皮を切る。

⑱腹側から中骨に沿って、片身を下ろす。

⑲反対側も同様に、背側の皮を切る。

⑳尾ビレのつけ根に包丁を差し込み、中骨に沿って大名下ろしする。クサヤモロやオアカムロは、ムロアジより身が柔らかい。身割れを防ぐためには、素早く一気に下ろすことが大切だ。

㉑腹骨を、すき切る。

㉒小骨を抜く。

㉓塩を、たっぷりと振る。

㉔塩が溶けてきたら水洗いして、水気を拭き取る。

㉕皮を剥く。皮の端をつかんだら、親指で身を起こすようにする。

㉖尾の近くまできたら、まな板に押さえて一気に引っぱる。

㉗アジ科特有のゼイゴ(綾鱗)も、一緒に引ける。

㉘縦に二等分したら、2㌢ほどの幅で角切りにする。

㉙クサヤモロの刺し身は、塩で締めただけ。魚の旨味だけが凝縮された、素朴な味わいがいい。

㉚クサヤモロは、言わずと知れた「くさや」の魚だ。伊豆諸島の名物で、魚の腹ワタを代々漬け込んだ液(?)に浸す。干物は焼くと威力を発揮して、知らない人は逃げ惑う。知る人は、思わずニンマリ。酒なしでは、いられない。

 

オアカムロ

㉛尾ヒレだけが赤い、オアカムロはよく目立つ。円筒型はよく太り、40㌢級がよく群れる。珍しい魚ではなく町のスーパーにも並ぶが、身が柔らかいせいか日保ちがしない。よく脂がのって、美味しい魚でいながら安いのは、早く売りたいからだ。ならば、買ってやろうじゃないか。

㉜下ろし方は、クサヤモロと同じ。㉒までの処理をしたら、今回は塩を使わない。器に昆布を敷いただけで、生酢に6~12時間漬け込むだけだ。

㉝オアカムロは脂が強いので、酢が身を引き締めて素直な味わいだ。締めサバのように塩と酢を使わず、片方だけで魚が生きることもある。ここで余談だが、オアカムロは塩焼きも旨い。ウロコを落としただけで、腹も開かずに丸ごと焼く。腹ワタの脂が身に染みこんで、ホックホクだ。塩が脂を吸って焦げたあたり…たまらない。