テングサ(海藻) - 弁慶丸

西潟正人の魚道場

テングサ(海藻)

2020.01.21

テングサ(海藻)

テングサは紅藻類の海藻で、約18種類を総称する。寒天には主にマクサ、オバクサ、ヒラクサを使い、古くから日本料理に欠かせない。夏の風物詩トコロテンは「心太」と書き、知らない人はいないだろう。ところが、テングサから心太にする、家庭が希になった。海藻のテングサが、心太になることも知らない。海の香がする心太は夏休みの、母の味だった。作り方くらいは、覚えておきたい。

 

さらす

①採取は春から初夏が一番だと、漁師は言う。盛夏に近づくと、草に貝殻が付着するそうだ。岩に付いていた根っこの、砂利などを丁寧に取る。

②茶褐色に見えたテングサにも、黒っぽいものや緑色が混じる。真水をかけながら天日干しするが、雨に当ててはいけない。干しながら、貝殻などの付着物を取り除く。

③全体がセピア色になるが、多少赤や緑を残した方がいい。さらすほど純粋な寒天質だけになってしまい、海の香りが失せてしまう。

 

煮だす

④乾燥テングサを、目安に50㌘を用意する。

⑤全体を、かるく水洗いする。

⑥真水2㍑のナベに入れる。

⑦沸騰直前に生酢を少々注ぐ。

 

漉す

⑧中火でしばらく煮たら、熱いうちに漉す。

⑨手ぬぐいの目が最適だ。

⑩熱いから注意して、しっかり絞る。

 

固める

⑪金属製のバットへ移す。

⑫自然に冷まして固まってから、冷蔵庫に入れるといい。

 

心太

⑬道具はトコロテン突き、略して「天突き」という。古くは木製、今はプラスチック製が安く売られている。

⑭天突きに入る大きさの長方形に切り、グイッと押し出す。

⑮夏は、酢じょう油に和ガラシが基本。あしらいは、お好みだ。

 

余録

テングサの多くは、信州の山中まで運ばれている。雪の上にトコロテンを並べ、夜間に冷凍、昼間に解凍を繰り返して「寒天」にする。純粋な寒天質はケーキ作りなど、料理に重宝されるが海の香りはしない。テングサから作る自家製心太は、さらし方が多少荒っぽくて香りが残る。