カワハギ - 弁慶丸

西潟正人の魚道場

カワハギ

2020.01.20

カワハギ

 

夜に虫の声を聞くようになると、夏の背中を見る思いがする。そんなセンチメンタルな気分を吹き飛ばすのは、食欲しかない。実りの秋は山だけでなく、海も同じ。多くの魚たちが、翌春の産卵期を控えて体力を増している。体力は肝臓に蓄えられて、カワハギの肝も張ってきたに違いない。この季節、釣り人はそわそわとして、食いしん坊は魚屋の巡礼に余念がない。料理の流儀はそれぞれだろうが、カワハギの全てを1皿に盛りつけるってどうだろう。

 

目利き

 

①体長15㌢前後がいい。小さければ煮つけ用、大きすぎると身が痩せていることが多い。

②秋口から冬にかけてのカワハギは、腹がふっくらと膨らんでいる。これで肝の大きさがわかるが、春先には卵巣で膨らんでしまう。

 

下ごしらえ

③背側を手前にして、まな板に置く。胸ビレに際に包丁を立てるように入れ、首骨から後頭部を切断する。カワハギが生きているときも、この方法で締める。

④胴部と頭部を、左右の手で切り離す。

⑤肝臓に付着している胆のう(苦玉)を、つぶさないように取る。肝臓以外の腹ワタは、捨てる。

⑥頭部の表皮を、手で剥ぎ取る。

⑦浮き袋は、取り置く。

⑧血合いなどを水洗いして、表皮を手で剥ぎ取る。頭部、肝臓、浮き袋、胴部が残る。

 

三枚下ろし

⑨背ビレ際から、尻尾まで包丁を入れる。

⑩腹側から中骨に沿って、片身を開いていく。

⑪残った片身も背側から包丁を入れて、背ビレ際の皮を切り進む。

⑫腹側から開いて、三枚下ろしの完了だ。

 

サク取り

⑬中心に走る小骨(血合い骨)を、背身側に残して腹身を下ろす。

⑭背身に残った小骨を切り取る。

⑮腹部に残る、腹骨をすき切る。2枚の片身は、4本のサクになる。

 

刺し身

⑯まな板に薄皮を押し当てるようにして、身を薄く削ぎ切りする。まな板に、薄皮1枚が残る要領だ。

⑰残った尻尾の身は、薄皮を引いて切り取る。

 

添え物

⑱薄皮は竹串に巻いて、塩焼きにする。

⑲頭部も塩焼きに、浮き袋は湯通し、肝はたたいて薄造りに添える。

 

薄造りの1皿

⑳カワハギ1匹分が、それぞれ料理されて1皿になった。薄造りは、肝醤油をつけて召し上がれ。頭部と薄皮の塩焼きも、楽しい酒のサカナだ。