カナガシラ&カナド - 弁慶丸

西潟正人の魚道場

カナガシラ&カナド

2020.01.20

カナガシラ&カナド

 

カナガシラはホウボウほど大きくならず、ウロコが大きくて体表がザラザラしている。20㌢を超えると見間違えてしまうが、市場では偽ホウボウ扱い。カナドに至っては10㌢ほどだから、ゴミ同然。味はホウボウと肩を並べるのに、小さいだけで嫌われる。料理を面倒がられて、美味しい魚が売れないとは情けない。小魚料理は、相手が小さいだけに簡単だ。カナドの味を知ったら、捨ててはおけない。

 

下ごしらえ

①15㌢ほどのカナガシラ。刺し身にする下ろし方は、ホウボウの項を参照だ。

②10㌢ほどのカナド。ホウボウ、カナガシラと共にいい出汁が取れる。

③ウロコを落とす。固いウロコは、包丁の刃先でこそげ落とす。

④腹を開いて、エラと腹ワタを取り捨てる。背骨にくっついている浮き袋は、捨てずに取り置く。水洗いして、水気を拭き取る。

 

潮汁

⑤飾り包丁を入れると、旨味が出やすい。浮き袋と卵巣も、一緒に煮る。

⑥昆布を敷いた鍋に魚を並べ、たっぷりの水から煮る。沸騰直前に昆布を取り出し、アクをすくい取る。酒と塩、味醂で味を整える。

⑦1匹のカナドを入れて、熱々の潮汁に長ネギを散らす。赤い小魚が煮えて、引き締まった白身は骨離れがいい。汁と一緒にいただくと、魚の旨味が、体に染みていくのがわかる。ホッと一息をつく、贅沢な時間だ。

 

開き干し

⑧エラぶたから包丁を入れ、④の頭部を落とす。

⑨腹側から、中骨に沿って開く。

⑩価値の低い小魚は、混じりで売られることが多い。カスミサクラダイ、オキトラギスなども一緒に下ろすと、賑やかな開き干しだ。

⑪かるく塩を当てて、風通しのいい日陰に半日ほど干して生乾きにする。

⑫熱を通す程度に、焼上げる。

⑬開き干しは手づかみで、かじるように食べる。3種類の魚がいて、思わず微笑んでしまう味の違いが楽しい。カナドは身が締まって、一番味が濃い。

 

余談

⑭定置網なら沖で捨てる魚も、刺し網は網に絡まったまま港まで運ばれる。ゴミと一緒にされた小魚たちは、やはり捨てられるのだろうか。赤いカナドは、白い腹を見せて捕れたばかり。漁業現場では毎度の光景で、見慣れてしまった。