ウルメイワシ - 弁慶丸

西潟正人の魚道場

ウルメイワシ

2020.01.16

ウルメイワシ

 

カタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシ、の3種が日常でイワシと呼ばれる。数の少なさと、日保ちの悪さからだろう。鮮魚や丸干しも、ウルメイワシが一番高価だ。20㌢を超える大型イワシで、大きな目が潤んでいるように見える。カタクチイワシ、マイワシでも紹介した手開きは、ウルメイワシでは通用しない。身が柔らかいから、手と包丁の併用だ。そして、丸干し。魚の干物は生鮮食品だと訴え、生干しを推奨してきたが、ウルメイワシだけは乾物に限る。それでも、鮮度が命。乾かしたからとて、1年も保存しては死んだ魚も浮かばれない。

 

下ごしらえ

①定置網漁で、甲板にこぼれ落ちたウルメイワシ。背に光る青い帯が、目を見張るほど美しい。

②胸ビレの際から頭部を落としたら、腹身を5㍉ほどの幅で、肛門下まで切り落とす。水洗いして水気を拭き取り、下ごしらえの完了だ。

 

手開き

③両親指で、背骨と腹骨を切り離す。

④中骨に沿って、片方の親指を這わす。

⑤首骨を掴んで、中骨をしごき取る。

⑥親指で片身を起こすようにして、皮から剥がす。

⑦背ビレ位置を確認して、同様に。

⑧背ビレ際から身を起こし、残った片身を皮から剥がす。

⑨背ビレが付いたままの皮と、2枚の片身が取れる。

⑩腹骨を、すき切る。

⑪刺し身は、これ以上包丁を入れない。片身を丸ごとほおばって、ウルメイワシの醍醐味だ。ショウガ醤油でも、ワサビでもよし。

 

丸干し

⑫エラ口から、竹串やワラを通すと風情が違う。カタクチイワシ、マイワシの丸干しは生干しが多い。悪くないが、ぐしゃぐしゃと汚れるのが難点だ。ウルメイワシは煮干しにしなくても、固干しに絶える。強めの塩水に30分ほど漬けてから、風通しのいい日陰で干し上げる。

⑬石のように固く干し上がったら、完成だ。焼くのではなく、熱を通すだけの焼き加減にすること。焦がしえては、苦労も台無しだ。

⑭カチカチを、奥歯でチギリながらのコップ酒。しょっぱさの奥に、ウルメイワシの息遣いが聞こえる。

⑮必要もないのに、こんな弁当があったら…と思った。上等な明太子に大根葉の浅漬け、小ぶりなウルメイワシの丸干しに、太陽に干からびた梅を散らす。弁当だって、一杯飲まずにいられまい。