マサバ/真鯖(ゴマサバ) - 弁慶丸

西潟正人の魚道場

マサバ/真鯖(ゴマサバ)

2020.01.14

マサバ/真鯖(ゴマサバ)の捌き方・料理レシピ
刺身(締めサバ)・押し寿司・卵巣のからすみ・船場汁・サバ節・塩サバ

一般にサバとはマサバを指したが、近年は外道扱いだったゴマサバも台頭してきた。「関サバ」や「松輪サバ」などのブランド極上鯖も健在だ。寒い季節に旬を迎えるマサバに対して、ゴマサバは夏が旨い。昔、漁師に「夏のゴマサバは旨ぇぞ」と囁かれた。評価はそれぞれだが、料理法は同じなので、ここでは一緒にした。開き干し、塩焼き、味噌煮は家庭料理で我慢できても、締めサバになるとうんちくを語る人が多い。旨い締めサバが食いたい…ならば極上のサバを探し求め、自分で作った方がいい。ただ極上の締めサバになる新鮮なマサバもゴマサバもスーパーの魚売り場ではちょっと見つからない。よく自称サバアレルギーの方がいるが、その正体は「ヒスタミン中毒」で、鮮度の悪いサバを食べただけでアレルギーではない。新鮮なサバをぜひ食べて本来のサバの味を知って頂きたい。そこが難題なのだが。
ここでは、基本的な捌き方を中心に刺身(締めサバ)・押し寿司・卵巣のからすみ・船場汁・サバ節・塩サバの料理レシピを説明していこう。

代表的な料理 刺身・締めサバ・棒ずし・味噌煮・塩焼き
サバ料理に注意したいのは「アニサキス」だ。加熱処理(60度以上1分)、冷凍処理(-20度48時間)が基本。目視とよく噛む事で十分な対策が出来る。アニサキスは少しでも傷が付くと死んでしまうので、普段からよく噛む習慣を身につけておくことだ。

マサバ/真鯖(ゴマサバ)の目利き マサバとゴマサバの違い・見分け方

①上がマサバ、下がゴマサバ。ゴマサバには、胡麻を散らしたような模様がある。太っていると旨そうに見えるが、腹にイワシ餌が詰まっていることが多い。スマートな体型でやせていず、40㌢もあったら極上だ。鮮度は言うに及ばず、体はカンカンに固く張っていなくてはならない。

マサバ/真鯖(ゴマサバ)の下ごしらえ

②胸ビレの際から頭部に向かって、鋭角に包丁を入れて首骨まで切る。

③頭部を落とす。

④腹を開いて、腹ワタを出す。卵巣を見つけたら、取り置く。

⑤背骨に付着している、血合いを切る。

⑥水洗いして、水気を拭き取る。

マサバ/真鯖(ゴマサバ)の三枚下ろし

⑦背ビレの際皮を切ったら、尻尾の根元に包丁の刃先を差し込む。中骨に沿って一気に片身を下ろす、大名下ろしが身崩れを防ぐ。反対側も同じようにすると、2枚の片身と1枚の中骨が残って三枚下ろしと言う。

マサバ/真鯖(ゴマサバ)を締める

⑧雪が積もるくらい、たっぷりの塩にまぶす。2時間ほどして塩が溶け出したら、水洗いして水気を拭き取る。

⑨生酢に漬ける。昆布を敷いてもよし、柑橘類を搾ってもよし。この辺りに、料理人の人生観が垣間見られる。3~6時間が漬けごろだ。

⑩酢の水分を拭き取ったら、両端を切りそろえる。

⑪腹骨を、すき切る。

⑫小骨(血合い骨)を、刺抜きで抜く。

⑬表皮の薄皮を、頭部の方向から剥がす。

マサバ/真鯖(ゴマサバ)の締めサバ

⑭1切れは7㍉ほどの厚さにして、真ん中に飾り包丁を入れる。脂の強いサバにワサビ醤油がつきやすくなると言うが、締めサバにはよく似合う。

⑮サバは個体が違うと、身質の模様も味わいも異なる。締まり具合は、切り身が1㍉ほどの額縁になっていること。市販品が真っ白になっているのは、寄生虫(アニサキス)を恐れ、芯まで締めてから冷凍するため。寄生虫の駆除の仕方は、スルメイカの項を参考にしていただきたい。極上の締めサバが食いたかったら、多少の危険はつきまとう。ちなみに北回帰しないゴマサバには、アニサキスが寄生しないようだ。
https://benkeimaru.com/wp2019dojo/548.html(スルメイカ)

マサバ/真鯖(ゴマサバ)の押し寿司

⑯締めサバができたら、サバ寿司だろう。握りではなく、力強く押しつけて飯と一体となった押し寿司だ。木枠は頑丈な、本物を用意したい。

⑰締めサバは、厚みを均等に削ぎ切る。

⑱身が細くなる尻尾に、補充する。

⑲木枠の底に、皮面を下にして置く。

⑳寿司飯をまんべんなく、柔らかく詰める。

㉑ 飯が木枠から外れやすいよう、ラップを覆ってから力強く押しつける。

㉒ 木枠を逆さまにして押し上げると、棒状の寿司が抜け出る。

㉓ 板から外して、2㌢ほどの厚みに切り揃える。

㉔ 極上の締めサバが、飯にがっちり食い込んでいる。

マサバ/真鯖(ゴマサバ)の卵巣のからすみ

㉕ からすみは唐墨、本来はボラの卵巣で作る高級珍味だ。たっぷりの塩に数時間漬け込んだら、酒で洗う。

㉖ 板ガラスに挟むようにして形を整え、天火で干す。完全乾燥より、一歩手前くらいが旨い。

㉗ かるく炙って、食う。保存ができて、重宝する酒のサカナだ。

マサバ/真鯖(ゴマサバ)の船場汁

㉘ 大阪の問屋街が発祥とされ、塩サバを利用した労働者料理であったらしい。筒切りしたサバの腹ワタを抜き、塩でよく洗う。大根もぶつ切りのまま、一緒に水から煮る。浮いてくるアクを取り除きながら、塩だけで味つけをする。

㉙ 熱々をすすって、だれもが目を丸くするだろう。サバって、こんなに旨かったのかと思う。安い小サバでも、充分いける。

マサバ/真鯖(ゴマサバ)のサバ節

㉚ 北陸を旅していたら、宿の軒先に干からびた魚が下がっていた。聞けば小サバを干したもので、いい出汁がでると言う。鰹節にない力強い出汁に驚いたのは、夕食時の味噌汁だった。

マサバ/真鯖(ゴマサバ)の塩サバ

㉛ 西伊豆の田子に、塩ガツオの文化がある。カツオを激辛サケのように塩っぱく漬け込んで、正月魚(しょうがつお)なんて洒落込んでいる。1切れの塩っぱさに驚くが、噛みしめると旨味が滲み出る。サバに応用すると、これが驚くほどであった。塩サバよりも、新巻サバが良かったか。

㉜ 腹を開いて洗ったサバに、たっぷりの粗塩をすり込む。しばらく置いて水気を出したら、さらに塩を追い打ちし、頭を下に向けて吊り下げる。

㉝ 水が出なくなったら、冷蔵庫で寝かせる。

㉞ 1週間ほどすると、干からびたようになる。

㉟ 食べたい分だけを切り、日々を楽しむ。

㊱ 塩っぱいが、旨い。高血圧が恐ければ、少量を箸でなめる程度に抑えたらいい。白い飯にのせて、旨ぇモンとは悪魔の味にあると気づくだろう。

㊲ 食べきる前のオブジェは、魔除けのようだった。