チヌ(黒鯛) - 弁慶丸

西潟正人の魚道場

チヌ(黒鯛)

2019.07.29

釣り人気は高いのに、食味評価が低い。関西ではチヌ。関東では、チンチン→カイズ→クロダイ、と成長によって呼び名が変わる。だがカイズは誤りでケイズが正しい、と文豪・幸田露伴は「幻談」で書いている。系図を読めば正真正銘の鯛、が語源だからだ。鯛名がつく魚は日本に約300種、どれも「あやかり鯛」の群れで、10種に満たない鯛中の鯛がクロダイだ。マダイの赤色に対して、クロダイは黒い鯛。沿岸から汽水域にまで入り込み、朝まずめ時に釣り上げると、燻し銀は怒ったように背ビレを張り、釣り人をにらみつける。産卵期の初春に沿岸へ寄るものを”のっこみ”、晩秋に深場へ移動するものを”落ち”と呼ぶ。クロダイは、春から夏の魚だ。

下ごしらえ

① クロダイは雌雄同体で育ち、3歳くらいから雌雄に分かれるという。5歳以上は雌が多く、日本記録は1978年に三重県で釣れた69.5㌢(週刊・釣りサンデー)。20㌢前後なら、姿で塩焼き。30㌢、1㌔前後あれば刺し身サイズだ。

② ヒレ際までしっかりウロコを落としたら、胸ビレの際から慎重に包丁を入れる。

③ 肝臓など腹ワタを傷つけないように、皮身だけを切り開く。

④ 白子(精巣)を見つけたら、なおも慎重に

⑤ 反対側も切り進む。

⑥ 首骨を切断して

⑦ 頭部を落とす。

⑧ 白子だけは別にして

⑨ 取り置く。

⑩ 血合いを切ってから

⑪ ササラで血合いを洗い、水気を拭き取る。

三枚下ろし

⑫ 背側と腹側、どちらから包丁を入れてもいい。腹側から包丁を入れたら、腹骨切る。

⑬ 背側に包丁を回して、背ビレ際の皮を切り

⑭ 中骨に沿って開いていく。

⑮ 尾ヒレのつけ根で切り離すと、片身が下りる。

⑯ 残った片身は、背側から包丁を入れると楽だ。

⑰ 腹側へ包丁を回して、中骨に沿って開いていく。

⑱ 腹骨は、包丁を立てて切断していく。

⑲ 背側も開いたら、尾ヒレのつけ根で切り離す。

⑳ 三枚下ろしの、完了だ。

サク取り

㉑ 腹骨をすき切る。

㉒ 厚く取ったら、汁物や塩焼きにする。

㉓ 小骨(血合い骨)に沿って、腹身と背身に分ける。

㉔ 小骨が腹部だけに走っている魚は、身幅が均等にできる。

㉕ 腹身と背身の、どちらかに残った小骨を切り取る。

㉖ 片身が2枚で、4本のサクが取れる。

火取り

㉗ サクの皮面に、金串を打つ。

㉘ 直火で、皮面だけを焼く。

㉙ 即座に、氷水で冷やす。

㉚ 水気を、しっかり拭き取る。

㉛ 皮ごと味わうクロダイの刺し身は、酢味噌と相性がいい。

㉜ 豪快な姿造りは、食卓が華やぐ。

カブト焼き

㉝ 頭部をしっかり、まな板に立てる。ケガをしないよう頭部の両脇を押さえ、包丁を垂直に入れる。

㉞ そのまま、2つに開く。

㉟ エラを取り除いたら、ヒレを切り揃える。

㊱ 水洗いして、かるく塩を揉み入れたら10分ほど置く。

㊲ オーブンで焼けば、カブト焼きの出来上がり。

焼き白子

㊳ 腹から出した白子は、血筋などの汚れを取り除く。

㊴ オーブンで、表面がやや焦げる程度に焼き上げる。クロダイに限らず、多くの魚は白子が旨い…なぜだろう。